2016年03月14日
秋田駒ケ岳-山スキー(県境越え)

日程:2016年03月12日(土) 日帰り
天候:雪/晴|曇



▲男女岳(おなめだけ)
標高:1,637.2m
秋田県
日本二百名山
(地理院地図はこちら)
▲横岳(よこだけ)
標高:1,582.6m
岩手県・秋田県
<ルート>
◎アルパこまくさ ~ 8合目小屋 ~ 阿弥陀池避難小屋 ~ ▲男女岳山頂
~ ▲横岳 ~ 荒沢橋 ~ ドライブインくにみ跡
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以前からやってみたかった秋田駒ケ岳の山スキー縦走。
昨年は天候不良につき山頂で引き返したわけだが...
今回、無事達成できた!
今回の記事タイトルにもある「県境越え」。
これを冬季に山スキーで行うことに以前から魅力を感じていた。
秋田県側の登りルートについてはメジャーな冬季ルート。
アルパこまくさの駐車場から8合目小屋を経由して秋田駒ケ岳の山頂を目指す。
一方、岩手県側への滑走ルートに関しては情報があまりない、といったところだ。
2009年4月に一度だけ岩手県側から県境の横岳まで山スキーで入ったことがある。
その時の記憶と師匠的存在のタラさんの情報とアドバイスを頼りに今回のスキー縦走へ挑む。
<2009年の記事はこちら>



いつもの山スキーの相方と二人での山行きである。
▲06:30 ドライブインくにみ跡地
先ずは車一台を岩手県側の下山予定地(国道46号沿い)へデポする。
昔この場所に「ドライブインくにみ」というドライブインが存在した。
その「跡地」ということでこの様に記載させていただく。
<2009年4月の写真>

相方の車に山行き荷物を積み替える。
スキー靴状態で下山する訳だから、運転用にサンダルは置いていこう。
此処「ドライブインくにみ跡地」から仙岩峠を越えて秋田側へと移動する。
約30分で出発地の「アルパこまくさ」へと到着した。
この程度の移動時間なら、下山後の車の回収も差ほど苦にならない。
▲07:00 アルパこまくさ 到着
朝7時、既に駐車場は賑わっていた。
ここで準備をしている大半の方はキャットツアーの利用者だろう。
この後、7時半にキャット第1便が出発するとのことである。

キャットは未だ利用したことがない。
利用すれば8合目小屋までの約2時間の登りを楽できる。
それもちょっと魅力的だ...
▲07:20 アルパこまくさ出発
山行きの準備も整い、いざ出発。
キャットより10分ほど早くアルパの駐車場を出発した。

<アルパこまくさ>
ホームページはこちら

出発時の天候は雪だ。
今朝は平地でもマイナス8度まで冷え込むほど...
かなり軽い雪が5cmほど降り積もっている。
上部はどうだろうか?
この1週間の天候より(暖かく雨も降った)雪の状態は何となく予想出来た。

旧ゲレンデには雑木が目立つ。
何処へ行っても今季は雪の少なさが良くわかる。

ゲレンデを登っていると後ろからキャットのエンジン音が近づいてきた。
キャットより10分早く出発したのだが、ゲレンデ上であっさりと追い抜かれる。

出発時は降雪で視界もイマイチだったが、
旧ゲレンデの最上部へ到達する頃には青空が見られるようになっていた。

▲08:15 ゲレンデトップ
1時間弱でゲレンデの最上部へ到着する。
ここから樹林内へと入り込む。
樹林内の積雪は上質パウダーだった。
もしパウダーを滑る目的ならば、この先の樹林帯がお勧め。
今日のこの雪質なら樹林内はとても楽しいだろう。
生憎、今日は縦走と目的が違う...

▲08:20 車道
出発から1時間で冬季閉鎖中の車道へと抜け出た。
車道の雪はキャットで踏み固められているのでシール歩きが楽である。

カーブミラーの状態より積雪具合を確認。
例年より少ないとは言え、奥羽山脈秋田側はまあまあじゃないかな?

車道はなるべく樹林を通過してショートカットしながら進もう。

天候は回復気味。

徐々に青空も広がっていく。
こうなれば歩いているだけでもとても気持ちが良い。


斜面のズーム。
中腹のあの樹林帯がパウダーゾーン。
滑り目的ならあの辺り。
今日のツリーランは楽しいだろうな。

何度か訪れている中でも、登りでこんなに景色が良いのは初めてだ。
(いつも視界が悪く風当たりが強い印象...)

今日は結構手前から8合目小屋が見えていた。
その8合目小屋まで順調に到着した。

既に8合目小屋前には誰もいなかった。
この天気だし、キャット利用者も早々に出発して行ったことだろう...
▲09:15 8合目小屋
小屋前にはアスファルトが露出していた。
正面の入り口は閉ざされたままだ。

一方、2階へ通ずる冬季用の入口側には雪が多し。
今日は小屋内を利用する必要もない。
小屋の横に座っておやつのどら焼きを食べておく。
久しぶりの回進堂どら焼き(胡麻)である。



その時に到着されたスプリットボードの方と暫し情報交換。
▲09:35 8合目小屋出発
どら焼きタイムなど20分程の休憩をとった。
その後は次の目的地である阿弥陀池小屋を目指して出発する。
先行者のトレースを追う。
<8合目小屋を振り返る>

雄大なる男女岳斜面を眺める。
あの斜面は滑れるのか?

そういえば一カ月ぶりのシール歩行だった。
この辺りから左踵内側部の靴擦れが気になり始める。

北方向には乳頭山までが良く見えていた。

男女岳直下。

阿弥陀池小屋へ向かうに尾根上から一度谷の中へと滑り降りる。
今日の様に視界が良い日は谷の中も安心だ。

今日は谷の中から左側の斜面へと取りついた。
その斜面を登ると正面に阿弥陀池小屋を捉えることができた。

右手に男女岳の山頂斜面を眺める。
山頂には滑走前の何名かが見えていた。
既にシュプールも数本できている。
あそこは普段から滑りやすい雪質なのだが今日の状態はどうだろう?

<阿弥陀池避難小屋から男女岳>

▲10:20 阿弥陀池避難小屋
8合目小屋から45分ほどで阿弥陀池避難小屋へと到着する。
天気に恵まれ、ロスなくここまで来れた。

阿弥陀池小屋前では強風を防ぐようにして2名の方が休憩していた。
他の方々は概ね男女岳へ登っているところだろう。
私はスキー靴を脱いで気になっていた踵の靴擦れ対処をする。
踵の靴擦れは大したことないが、早めに絆創膏処置を施した。
冷えて固まったスキー靴に再び足を入れるのに難儀する...
無理やり履こうとしたら足が攣りそうになった...
▲10:35 阿弥陀池避難小屋 出発
その際に大きなザックを背負った方に出会う。
大きなザックの中身はパラグライダーだという。
そういえば網張周辺エリアでスキー滑走から上空へ飛び立つ方に会ったことがある。
話を聞けば「それは私だ。」とのこと。

パラグライダーの方は男岳斜面を下見してきたようだ。
相方が男岳からムーミン谷へ滑れるかどうかを聞いていた。
あの斜度を一度滑ってみたいとのこと...
今日、岩手側(国見方面)へ下山することを考えればルート的には支障なし。
百聞は一見に如かず、男岳分岐まで行ってみることにした。

ここに大きな池があることも忘れてしまう景色である。
凍った阿弥陀池上を直進し、夏道の男岳分岐まで行ってみた。
▲10:45 男岳分岐
男岳分岐へと丘を登り、そこから正面に女岳を眺めた。

そして男岳の急斜面を覗き込む。
ここを滑ったら雪崩が起きるだろう。
相方が滑走地点で弱層を確認するも、15-20cmのところで簡単に層がズレる。
ここは滑れない。

相方曰く、残雪期のザラメになったらこの斜面を滑ろうと。
男岳登頂に備えて、アイゼン、ピッケルは装備して来る必要があるな...
男岳分岐からは阿弥陀池へとシール滑走し、次に男女岳へ登ることにした。

男女岳の斜面は予想通りの状態だった。
アイスバーンの斜面の上に15-20cmほどの積雪である。
この積雪のおかげで滑走は可能だが、登りでは雪がズレて少々登り難い。
男女岳は斜度があるのでシール登高は疲れるが、思ったほど時間はかからない。
斜面上部から阿弥陀池小屋を見下ろす。
ここの景色は特に雄大である。
夏山でも雪山でも、私のお気に入りの景色だ。

▲11:05 男女岳
秋田駒ケ岳山頂、男女岳へ登頂するも運悪し。
登頂と同時に一気に視界が悪くなってしまった...
阿弥陀小屋前で休憩していた2名の方とも、この残念な気持ちを共有する。
一先ずピークハントおめでとう!
早急にシールを剥がして滑走の準備をする。



一瞬明るくなったか?
それを見て「滑り派」の相方は飛び出していったが大丈夫か?
視界の悪さは差ほど変わらない...
▲11:20 男女岳滑走
相方が行ってしまったので私も回復を待たずに出発する。
まあ、ここは慎重に降りることにした。
やはりアイスバーンの上に積もった雪。
板をズラすと、ガリッとエッジが音をたてる。


下るに連れて視界が幾分回復した。
しかし、残念ながら爽快なる滑走はここでは楽しめなかった。
さて、このまま視界が回復しないと岩手県側へ縦走する計画も厳しいか?
再びシールを貼ろうといろいろ準備をしていると...
何とも視界が回復していく...
男女岳の登頂から滑走まで。
行程ピーク、一番盛り上がるところで一番の悪天候だった...
まあ、これで計画通りに岩手県側へと向かうことができるな。
一安心。
さて、今度は阿弥陀池小屋を挟んで反対側の横岳へ向かう。
しかし、この横岳方面の斜面がカチカチで非常に厄介だった。

シールは全く効かなかった。
相方は早々に板を担いでツボ足で登りにかかった。

私はこの強風の中、板を背負いたくなかったのでクトー(スキーアイゼン)を装着した。
この様な場面を想定してザックに入れていた。
クトーは昨年購入したアイテムでなかなか出番は少ない。
<ディアミール用クトー>

このコンディションでクトーはとても有効だった。
使用の際はディアミールのヒールリフタを下げて使用した方が効果がある。
これで板を担ぐことなく横岳まで進むことができた。

▲11:50 横岳
岩手県と秋田県の県境である横岳へ無事登頂。
残るルートは車のデポ地点まで「滑走のみ」と判断。
シールとクトーを板から外してザックへ収納する。
横岳登頂時は視界が利かず滑走方向もままならない状態だった。
しかし今度は(男女岳とは反面)横岳登頂と同時に視界が良くなってきた。

視界が回復すると、夏道の登山道である大焼砂を眺めることが出来た。
その横の丸い噴火口が小岳である。
大焼砂上は黒く雪が付いていない箇所も見られる。

▲12:05 横岳滑走
さて、足元の状態はガリガリのアイスバーンである。
ここはエッジでガーッっという音を立てて滑り降りた。

暫くはそのような斜面が続く。

大焼砂の登山道から左手に反れ、樹林を目指して下っていく。
所々に白く雪が吹き溜まっている。
そこを選択して滑り降りた。

黒く地面が露出している部分を避けていく。
すると漸くアイスバーン地帯も終わりに差し掛かる。

アイスバーンから脱出して快適な滑走が始まる!
下るに連れて若干サンクラスト気味ではあったが、今日の板はうまく滑ってくれた!








この斜面は最高だった!


ある程度下ってくると爽快な樹林限界地帯も終わりとなる。
ダケカンバか?
一気に木々の密度が濃くなってくる。
ここはちょっと厄介だった...

しかし、この密度の濃い場所はそれ程長くなかった。
少しだけ辛抱すれば樹林帯は広大なブナ林へと入っていく。
木々の密度も大分薄くなってきた。

今年の積雪が少ないせいもあるのか?
地形図上では分からない沢が幾つか現れてくる。
登り返しは面倒なので、地図とGPSを照らし合わせながら慎重に沢越えを判断。
私のGPSだが、山頂で電池交換した時から地形図が表示されなくなってしまった...
その辺りは2人ともGPSを持っていたので良かったなと...

沢は横に2つほど越えた。
結果、相方の良い判断だった。
ちょっと深目であったが、滑る勢いと横歩きの登りでシールも不要。
時間のロスも無く、うまいこと越えることができた方だろう。

広大なブナ林である。
滑っていて見覚えのある景色だったなと感じた...
ここは過去に熊棚や熊の足跡が多く見られた辺りだ。
ということで、熊鈴を鳴らしながら滑った。
しかし、ここでのルート取りには過去(2009年)の記憶などは役に立たない。
何と言ってもGPSは役に立つ...
さて、いよいよ尾根の先端まで来たか!?
▲13:00 痩せ尾根
なかなか樹林帯の滑走は楽しめた。
そして見覚えのある痩せた尾根まで下りてきた。
さて、ここは左手の斜面を滑り降りる。

斜面は急で所々に穴もあいている。
ここを相方は楽しそうに滑って行った。
上からだと穴とかも見え難いのにね...

私は慎重に板をズラしながら下りる感じだ...

実際に凹凸があって滑るにも面白い斜面もあった。
そして最後は国見温泉へと向かう旧国道(車道)へ下りることになる。
目的地の「荒沢橋」が見えて一安心。

最後の崖っぽい斜面を無事に下り、無事車道へと立つことができた。
▲13:10 荒沢橋
横岳から1時間ほど。
順調に「荒沢橋」まで下りて来ることが出来た。

緩やかな車道はスケーティングで滑るしかない...

冬季閉鎖のゲートまで、車道には雪がたっぷりと残っていた。
お蔭で、最後の最後まで板を外すことなく無事ゴールすることが出来た。
お疲れさんでした。

▲13:20 ドライブインくにみ跡
国道46号の脇にてスキーを外し、車の通りを確認しながら国道をササっと横断。



下山時間も無難な時間である。
ポケットにしっかりと車のキーが入っていて一安心。
これから30分かけて秋田側のアルパこまくさまで車を回収しに行く。
念願の秋田駒ケ岳県境越え、無事完了!

さて、今回のルートである。
<クリックで拡大可>

縦走スキーはイイね。
しかしピストンと異なり、下りの状況が分からないまま滑っていくことはリスクが高いか...
今後も天候が良い時などを狙って慎重に山行きを楽しみたい。
ではまた山で!
(完)
今回、ディアミール用のクトーが役にたった!
![]() DIAMIR(ディアミール) アクションアイゼン 110mm FR42502 |
この記事へのコメント
PALOMONさんの冒険でも凄いのですが、スキーからパラグライダーで飛ぶという信じられない人も居るんですね。
栗駒でパラグライダーで飛んだ人は見ました。一度きりですが。
写真からすると、上の方は結構斜面の状態が良かったようですが、国見温泉側は結構斜面の状態が良くないようですね。
夏山のコースとは違うようですね。温泉には出ませんね。ゲートは通るようですが。
栗駒でパラグライダーで飛んだ人は見ました。一度きりですが。
写真からすると、上の方は結構斜面の状態が良かったようですが、国見温泉側は結構斜面の状態が良くないようですね。
夏山のコースとは違うようですね。温泉には出ませんね。ゲートは通るようですが。
Posted by isam at 2016年03月15日 23:41
▼isamさん
スキー滑走からパラグライダーは凄いですよね!
この日は風が強すぎて無理と言っていました。
網張ゲレンデや犬倉あたりから飛んでいるところを見たことあります。
大焼砂周辺は風当たりが強いのでガリガリです..
滑走ルートは冬季限定です~!
スキー滑走からパラグライダーは凄いですよね!
この日は風が強すぎて無理と言っていました。
網張ゲレンデや犬倉あたりから飛んでいるところを見たことあります。
大焼砂周辺は風当たりが強いのでガリガリです..
滑走ルートは冬季限定です~!
Posted by PALOMON
at 2016年03月16日 12:54

男岳コルの斜面は風下の風成雪でした。昔、風成雪の斜面で嫌な思いをしたことがあります。少しでも不安を感じたり、迷った場合はやめておいた方が良いと思います。
下山ルートは、思ったよりもいいルートでしたね!3月というのが良かったのかも。ただ、地形図にはない沢形が荒沢に流れて込んでいるので、深くなる前に渡渉しておくのがいいですね。
翌日のスキー場は、土が出始めていました。
下山ルートは、思ったよりもいいルートでしたね!3月というのが良かったのかも。ただ、地形図にはない沢形が荒沢に流れて込んでいるので、深くなる前に渡渉しておくのがいいですね。
翌日のスキー場は、土が出始めていました。
Posted by 緑茶 at 2016年03月18日 22:30
▼緑茶さん
お疲れ様でした。
まずは達成して満足しているところです。
板もよく滑った為、下りは7年前より全然楽でしたね。
雪解けが速いのでGWはどんな感じになるのか?
今年は残雪が気になりますね...
お疲れ様でした。
まずは達成して満足しているところです。
板もよく滑った為、下りは7年前より全然楽でしたね。
雪解けが速いのでGWはどんな感じになるのか?
今年は残雪が気になりますね...
Posted by PALOMON
at 2016年03月19日 10:59
